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2018年7月10日火曜日

「人工呼吸器の本 アドバンス The Advanced Ventilator Book」


「人工呼吸器の本 アドバンス The Advanced Ventilator Book
William Owens著 田中竜馬訳

 この本は2週間前からAmazonで予約していたのと、Intermountain LDS Hospitalの田中竜馬先生から贈呈いただいたこともあって結果2冊になってしまいました。1冊は通読用、もう1冊は保存用とすることとします。届いてから数日後、早速落ち着いた環境で読みました。外は猛暑で暑いので、涼しいスターバックスでアイスコーヒートールサイズとともに50分、その後場所をかえて椿屋珈琲店でアイスカフェオレとともに50分。合計100分で読みきりました。ところどころ文中で示された文献をiPadで見直す時間を含めてもこの時間で読み切れてしまうサイズです。非常にシンプルな内容で、つまずいたり考え込んだりせずにすらすらと先に進めてしまいます。
 よく医学書は若手医師向け、専門医向けなどと分類されます。悩んでいる問題点が異なっているからでしょうか。一見すると本書はわかりやすい口調と軽やかな翻訳のおかげで、人工呼吸器初学者向けの本であるかのように見えてしまいます。しかし本書はどちらの対象にも間違いなくおすすめとなる内容です。
 その理由は人工呼吸器の管理には明確な「ルール」があり、誰が人工呼吸器を扱ってもそのルールが変わることはないからです。1冊目の「人工呼吸器の本 エッセンス」では人工呼吸器管理のルールを、そして2冊目である本書「人工呼吸器の本 アドバンス」は重症呼吸不全患者管理のルールを説明しています。専門医はもちろんそのルールを多少なりとも知っていますが、今まではこんなにスマートに書かれた本がなかったので、それは試行錯誤をしながら手に入れてきた側面があると思います。しかし本書を若手医師、さらには看護師も、読むことによって、経験や年数に寄らずに、そのルールを共通言語として手に入れることができるようになります。ICUはひとりでは成立しません。複数のチームスタッフが共通の目標のために共通の手段をもって取り組んでいくことが必要です。本書はそんな人工呼吸器と重症患者管理のルールをわかりやすく説明し、誰もが共通言語としてこのルールを元にして議論ができる、そんな素地をつくってくれるすばらしいものです。
 若手医師の方はぜひこのルールを学びましょう、そして専門医の方はこのルールを復習しましょう。そしてお互いに本書をベースとして臨床の現場で知恵を話し合えば、きっと人工呼吸器を使っている重症呼吸不全患者さんも良くなる方向に向くはずです。
  ちなみに本書にも出てくる私が好きなルールはpp.28「ポシティブでいる」です。